建設業許可の専任技術者の要件とは?満たす3つの方法を徹底解説

私は行政書士事務所の補助者時代から10年以上、建設業許可の申請に関わってきました。要件の判定でつまずく人は本当に多い。逆に言えば、ここを正しく押さえれば申請の8割は見えてきます。
この記事で分かること:専任技術者の定義と役割、3つの要件の違い、業種別の注意点、常勤性や実務経験の証明書類、退職や虚偽申請のリスクと対処法まで。申請前のチェックに使ってください。
建設業許可の専任技術者とは?まず押さえる基本

まず言葉の整理から。専任技術者(通称:専技)は、営業所に常勤して、その建設業の工事に必要な技術的判断を担う人のことです。建設業法上、営業所ごとに必ず一人以上を置かなければなりません。
専任技術者(専技)の定義と役割
専任技術者は、お客様からの技術的な相談や見積り、契約の内容を、専門知識をもって判断する人です。現場に出る人ではなく、営業所の中で技術面を支える役割だと考えてください。
「専任」とは、その営業所にしっかり腰を据えて専らその仕事に従事すること。掛け持ちや名義貸しは認められません。ここを軽く見て申請してつまずく事例を、私は何度も見てきました。
なぜ営業所ごとに必要なのか
建設工事は、契約の段階で技術的な判断が必要になります。だからこそ、契約の窓口である営業所ごとに技術者を置く仕組みになっています。
本店と支店があれば、それぞれに専任技術者が要ります。一人で二つの営業所を兼ねることはできません。ここは設計段階で人員を確保しておかないと、後で詰みます。
主任技術者・監理技術者との違いと兼任の可否
ここは混同されやすいので整理します。専任技術者は「営業所」に置く人。主任技術者・監理技術者は「現場」に置く人です。役割の場所が違います。
| 区分 | 配置する場所 | 主な役割 |
|---|---|---|
| 専任技術者 | 営業所 | 契約・見積りなど営業所での技術的判断 |
| 主任技術者 | 工事現場 | 現場の施工管理(原則すべての現場) |
| 監理技術者 | 工事現場 | 下請への発注額が一定以上の元請現場の施工管理 |
原則として、営業所に常勤すべき専任技術者が現場を兼ねるのは難しいです。常勤性とぶつかるからです。ただし例外規定があり、その点は後の章で詳しく触れます。
専任技術者の要件を満たす3つの方法
一般建設業の専任技術者になる道は、大きく3つです。国家資格を持つ、指定学科卒業+実務経験、実務経験10年。このどれか一つで構いません。

国家資格で要件を満たす場合
一番すっきりするのが資格です。一定の国家資格を持っていれば、実務経験の年数を問われずに専任技術者になれます。
ただし注意点。どの資格がどの業種に対応するかは決まっています。「電気工事の資格を持っているから管工事もいける」とはなりません。国土交通省の「配置技術者となり得る国家資格等一覧」で必ず確認してください。
学歴(指定学科)+実務経験で満たす場合
資格がなくても、業種ごとに定められた指定学科を卒業していれば、短い実務経験で要件を満たせます。
一般建設業の場合、高卒(指定学科)後は5年以上、大卒(指定学科)後は3年以上、専門学校卒(指定学科)後は5年以上の実務経験が目安です。指定学科は業種ごとに違うので、自分の卒業学科が対象かを先に調べておくと安心です。
実務経験のみ(10年)で満たす場合
資格も指定学科もない場合の道がこれ。その業種で10年以上の実務経験があれば認められます。
正直に言うと、この10年ルートが一番ハードです。理由は年数ではなく証明。10年分の経験を書類で立証するのが大変だからです。何を揃えるかは後の章で具体的に書きます。
業種別・資格区分別の要件と必要年数
専任技術者の要件は、業種によって対応資格も指定学科も変わります。同じ建設業でも、土木と電気では話が別だと考えてください。

土木・建築・電気・管など業種別の違い
たとえば土木一式なら土木施工管理技士、建築一式なら建築施工管理技士や建築士、電気工事なら電気工事施工管理技士や電気工事士、管工事なら管工事施工管理技士。業種ごとに通用する資格が決まっています。
指定学科も同じです。電気工事の指定学科を出ても、管工事の専任技術者にはそのまま使えません。自分の経歴がどの業種で通るのか、業種を起点に確認するのが実務の鉄則です。
資格区分ごとの実務経験免除・必要年数の対応
要件を満たす方法ごとに、必要な実務経験年数が変わります。一般建設業の場合を表にまとめました。
| 要件の満たし方 | 必要な実務経験 |
|---|---|
| 対応する国家資格を保有 | 原則不要 |
| 大卒(指定学科) | 卒業後3年以上 |
| 高卒・専門学校卒(指定学科) | 卒業後5年以上 |
| 学歴・資格なし(実務経験のみ) | 10年以上 |
複数業種にまたがる実務経験の扱い
複数業種で専任技術者になりたい場合、それぞれの業種ごとに要件を満たす必要があります。
ここで誤解が多いのが期間の重複です。同じ時期の経験を、土木にも建築にも二重カウントすることは原則できません。一人で複数業種を狙うときは、年数の足し方を慎重に組み立てる必要があります。
一般建設業と特定建設業で要件はどう違うか

専任技術者の要件は、一般建設業か特定建設業かで重さが変わります。特定の方が明確に厳しい。ここを取り違えると申請のやり直しになります。
一般建設業の専任技術者の要件
一般建設業は、先ほどの3類型(国家資格/指定学科+実務経験/実務経験10年)のいずれかでOKです。多くの中小建設業者はこちらに該当します。
特定建設業の専任技術者の要件
特定建設業は要件が上がります。一定の国家資格を持つこと、一般建設業の要件を満たしたうえで指導監督的な実務経験を積むこと、または国土交通大臣の認定。このいずれかが必要です。
ここでいう指導監督的経験とは、請負金額4,500万円以上の工事について2年以上の経験を指します。元請として工事を取りまとめた経験が問われると考えてください。
要件と請負金額(金額要件)の関係
よく聞かれるのが「専任技術者の要件と請負金額は関係あるか」。直接は関係しません。専任技術者は資格と経験で判断され、金額の大小で要件が変わるわけではないからです。
金額が絡むのは、一般か特定かの区分の方。下請に出す金額が一定を超えると特定建設業が必要になり、その結果として専任技術者の要件も厳しくなる、という順番です。
「専任」と「常勤」を疎明する実務と証明書類
要件を満たしていても、書類で示せなければ通りません。審査で問われるのは「本当に常勤か」「本当にその経験があるか」の2点です。

常勤性を証明する書類(健康保険証・住民票など)
常勤であることは、健康保険証(事業所名の記載があるもの)や、住民票で確認します。通勤が物理的に可能な距離かも見られます。
遠方に住んでいて毎日通えない、というケースは要注意。常勤性を疑われる典型です。私が相談を受けたときも、ここで一度差し戻された方がいました。
実務経験を証明する書類(契約書・注文書・証明書)
実務経験は、実務経験証明書に加えて、その期間に工事をしていた裏付けが要ります。具体的には工事の契約書、注文書、請求書などです。
10年ルートだと、10年分の裏付けが必要になります。古い注文書が残っていない――これが現場で一番多いつまずきです。経験はあっても証明できないと、年数はゼロから数え直しになりかねません。
| 証明したいこと | 主な書類 |
|---|---|
| 常勤性 | 事業所名入りの健康保険証、住民票、通勤経路の確認 |
| 実務経験の年数 | 実務経験証明書、契約書・注文書・請求書など |
| 資格による要件 | 資格証・合格証明書の写し |
| 学歴による要件 | 卒業証明書(指定学科であることの確認) |
「専任」と認められない具体的ケース
専任が否定される代表例を挙げます。他社の役員や従業員を兼ねている、別会社の専任技術者を兼ねている、他営業所の専任技術者と掛け持ち、住所が営業所から通えない距離――このあたりは高確率でひっかかります。
名義だけ貸す、というのは論外です。実態が伴わなければ虚偽申請になります。
2023年以降の制度改正と要件緩和の最新動向
近年、専任技術者まわりの要件は緩む方向に動いています。とくに2023年7月の省令改正は、資格取得の途中段階を評価する内容で、実務に効きます。

実務経験年数の短縮など緩和の具体例
2023年7月の改正で、技術検定の第一次検定合格者の扱いが見直されました。1級第一次検定の合格者を大学の指定学科卒業者相当、2級第一次検定の合格者を高校の指定学科卒業者相当として扱う整理です。
これにより、指定学科を出ていない人でも、第一次検定合格を足がかりに必要な実務経験年数を短縮できる場合があります。紹介されている目安は、1級合格後3年、2級合格後5年です。
私の率直な意見を言うと、この改正は若手の登用を考える会社に追い風です。第一次検定だけなら実務経験なしでも受けられる業種があり、人材確保の選択肢が広がりました。
現場の主任技術者との兼務に関する例外規定
原則、営業所の専任技術者は現場の主任技術者を兼ねられません。常勤性とぶつかるからです。
ただ例外があります。営業所と工事現場が近接していて、職務に支障がない範囲なら、兼務が認められる場合があります。逆に、現場で「専任」が必要な大きな工事では兼務はできません。ここは現場ごとの判断になるので、安易な掛け持ちは勧めません。
退職・虚偽申請のリスクと後任が見つからないときの対処

専任技術者は許可の土台です。その人がいなくなると、許可そのものが揺らぎます。ここは慎重に読んでください。
専任技術者が退職・死亡した場合の対応
専任技術者が退職・死亡したら、速やかに後任を立てる必要があります。後任も当然、要件を満たしていなければなりません。
変更が生じたら変更届の提出も必要です。空白期間を作らないために、私はいつも「後任候補を一人は社内で育てておく」ことを勧めています。
後任不在による許可取消しリスク
後任が見つからず、専任技術者が不在のままになると、許可の要件を欠くことになります。最悪、許可の取消しや廃業届につながります。
一人の資格者に依存している会社ほど危ない。その人が辞めた瞬間に許可が崩れる構造だからです。私が見てきた中でも、後任を用意していなかった会社が一番苦労していました。
虚偽申請・要件喪失時の罰則
実態のない名義貸しや、経験を偽った申請は虚偽申請です。発覚すれば許可の取消し対象になり、その後の再取得にも影響します。
「とりあえず通しておこう」は絶対にやめてください。通った後に実態を問われ、取消しになる方がダメージが大きいです。
一人親方・個人事業主が兼ねる場合の注意点
一人親方や個人事業主が、自分自身を専任技術者にするのはよくあるパターンです。事業主本人なら常勤性は説明しやすい。
落とし穴は、本人が現場に出ずっぱりになること。専任技術者は営業所に常勤する建前なので、現場専任が必要な工事と本人の役割が衝突しないか、事前に整理しておく必要があります。一人で回す体制ほど、ここが脆いです。
申請から許可取得までの流れとよくある質問
最後に、申請の流れと要件チェックの勘所をまとめます。専任技術者の要件は、流れの中で最初に固めるべき部分です。

申請・審査・許可取得までの流れと確認ポイント
おおまかな流れは、要件確認 → 書類収集 → 申請書作成 → 提出 → 審査 → 許可、です。専任技術者については、要件確認の段階で「誰を・どの業種で・どの方法で」立証するかを決めておくと後がスムーズです。
| 段階 | 確認すること |
|---|---|
| 要件確認 | 資格・学歴・実務経験のどれで満たすかを決める |
| 書類収集 | 常勤性と実務経験を裏付ける書類を集める |
| 申請前 | 対応業種と資格・指定学科の対応関係を再確認 |
| 申請後 | 変更が出たら速やかに変更届を出す |
専任技術者要件のよくある質問(FAQ)
よくある質問
迷ったら、業種を一つに絞って「誰がどの方法で要件を満たすか」を紙に書き出してみてください。そこが固まれば、必要書類は自然と見えてきます。後任の確保まで含めて設計しておけば、許可は長く守れます。
- 建設業許可申請の基礎知識Q13(stp.tokyo)
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